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2018.08.09

編集部

タイからの便り3 「少年たちの短期出家:功徳を回向し、新たに生きる心のリハビリ期間」

編集部より

洞窟から救出された少年たち。日本では続報がそろそろなくなってきました。

今回の件で、メディアの意識の違いが見れて、興味深いことがあります。

日本のメディアで少年たちの言葉を拾うと、どうなるか。

 

「少年らの多くが『サッカー選手か海軍特殊部隊員になりたい』と元気に答え、すっかり回復した様子を見せた。ボールを蹴るなどのパフォーマンスも披露した」

日本経済新聞7月19日

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33139280Z10C18A7CR0000/

 

と、私たちの文化の枠内で収まるようなコメントを紹介しています。

海軍のダイバーに救出されたのですから、とてもよくわかる心情です。

しかし、現地タイでは一時出家の話題が大きく取り上げられているようです。日本でも報じられましたが、正鵠を得た深堀りはされていない(と思います)。

 

実際、どうなのでしょう。

仏教のメンタリティをヴィヴィッドに感じる、浦崎雅代さんからの便りです。

 

* * * * * *

 

 

タイからの便り 3

少年たちの短期出家:功徳を回向し、新たに生きる心のリハビリ期間

浦崎雅代(タイ仏教通訳・翻訳)

 

6月末にタイ・チェンマイの洞窟に閉じ込められた

サッカー少年たちとコーチの計13名。

 

世界中から注目を集めたこの救出劇。

7月10日に無事全員救出されたニュースに

皆ほっと安堵しています。

 

少年たちは健康チェックのため入院したものの

皆元気に退院しました。

その後、こんなニュースが流れました。

 

 

少年たちが出家? なぜ?

 

そんな疑問を抱かれた方も多いかもしれません。

日本はそんな発想はまず出てこないと思いますが

ここタイでは皆が納得する展開です。

 

実は、彼らが行方不明だというニュースが流れた時から

「無事に洞窟から出てきたら、彼らは出家をしなければならないね」

という話が特に彼らの両親たちから出ていたようです。

 

実際タイ人の私の主人も

彼らの無事救出を願いながら

当然のように同じことを言っていました。

 

日本で「出家」というと非常に敷居が高く

一生出家すべきもの、という印象を持たれがちです。

しかし、ここタイでは出家も還俗も自由で

期間も各人の意思に応じて様々なのです。

 

今回の少年たちは、キリスト教の子1人を除いて

コーチも含めて12名が出家しました。

子供たちは9日間、コーチは1安居(3か月)の予定です。

 

メディアが盛大な出家式をこぞって報道しましたが

出家は徳を積む機会として良きこととされるので

彼らだけではなく、一般的にも盛大に行なわれます。

 

テーラワーダ仏教における出家は、

戒律を守りその期間はライフスタイルが変わります。

 

今回の少年たちの出家は

救出活動で命を落とした元タイ海軍のサマン・クナンさんへの

感謝と慰霊の意味もありますけれど

命の危機を体験した彼らの自身の「生き直し」

あるいは、心を「リセット」するという意味での

出家の意義もあろうかと思います。

 

命の危機を体験することによって

私たちの誰しもが様々な心の有り様を体験します。

 

感謝、罪悪感、慈悲、怒り、後悔、安堵、、、

 

そうした様々な心をありのままに見つめ

次なる人生のステップをどうよりよく生きるか。

 

この体験で揺れ動いた心を見守る

心のリハビリ期間としても機能することでしょう。

 

こうした出家を救出されて間もないこの時期に行う。

実は子供たちはまだ学期中のはずです。タイでは

この時期は夏休みではありません。

 

しかし、学校の授業を休んででも

9日間の出家が優先されることをタイでは

誰も疑問に感じることはありません。

 

学校の授業よりも大切な

いのちを学びなおす体験として

出家を応援する風土がここタイにはあります。

 

ある意味タイ的な「自己責任の取り方」

それが出家なのです。

 

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