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2019.07.25

コラム 商品紹介 編集部

東京にマインドフルネスの華が開いている

臨床の現場で開催されるマインドフルネスワークショップとその記録集

 

新刊『マインドフルネスを極める』共同編者の長谷川洋介氏が、マインドフルネスの実践場である東京マインドフルネスセンターが開催するワークショップについて語ります。

この東京マインドフルネスセンターはNHKなどのマインドフルネス関係の番組でもおなじみの熊野宏昭氏が診療する心療内科・神経科の赤坂クリニックhttp://www.fuanclinic.com/akasaka/)の中に開設されたセンターです。

ワークショップスペースからの外を眺める。都心のど真ん中にある

 

東京マインドフルネスセンターから生まれた本

 

この東京マインドフルネスセンターから生まれた本は多く、以下のタイトルがサンガから出版されています。

『実践! マインドフルネス―今この瞬間に気づき青空を感じるレッスン[注意訓練CD付]』

熊野宏昭[著]

(2016年8月刊)

*第3回マインドフルネスワークショップをもとに制作。

 

『東京マインドフルネスセンター ワークショップ集② 仏教瞑想の多面的適用』

貝谷久宣+長谷川洋介[編]/ステファン.G.ホフマン、藤田一照、山下良道、蓑輪顕量、小池龍之介[著]

(2017年4月刊)

*第1回から第6回までのワークショップ(第3回を除く)をもとに制作。

 

『マインドフルネスの背後にあるもの―存在神秘の覚醒をめぐるクロストーク』

古東哲明、藤田一照、熊野宏昭、貝谷久宣[著]

(2019年2月刊)

*2017年12月15日に行われた公開シンポジウムをもとに制作。

 

そして今回、ワークショップ集の第2弾が刊行されました。

『東京マインドフルネスセンター ワークショップ集② マインドフルネスを極める』

貝谷久宣+長谷川洋介[編]/伊藤義徳、川野泰周、岡野守也、大井玄、中野東禅[著]

(2019年7月刊)

*第7回から第10回のワークショップと、やはり東京マインドフルネスセンターが主催する鎌倉山マインドフルネス・リトリートの第9回をもとに制作。

 

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第4作目の刊行

実に4冊目の刊行となります。

『実践!マインドフルネス』と2冊のワークショップ集は、いずれも実践の記録であり、そのままマインドフルネスのインストラクションとなるものです。特に今回刊行した第2集は瞑想以外の方法の紹介や唯識の概説など、多様な角度からのアプローチ集となっています。また、『マインドフルネスの背後にあるもの』は、哲学的考察の深みと体験的なリアリティから立ち上がる、マインドフルネスに対する新しい視座を提供しています。

ぜひ読んでいただきたいです。

 

『マインドフルネスを極める』では編者の貝谷久宣氏の論考を巻末に収録しています。自身の医師として知見と禅の修行者としての経験から、医療におけるマインドフルネスの可能性の深さを率直な言葉で示唆していて、とても読みごたえがあります。ぜひご一読いただければ幸い。

 

前置きが長くなりましたが、ワークショップ集の共同編者の長谷川洋介氏より本書の紹介です。

(編集・川島)

 

『東京マインドフルネスセンター ワークショップ集② マインドフルネスを極める』出版によせて

長谷川洋介(東京マインドフルネスセンターセンター長)

ワークショップの中で瞑想する長谷川洋介氏

1.はじめに

 

東京マインドフルネスセンターは2013年の6月に、本書の共同編者でもある貝谷久宣理事長と共に医療の分野、治療として、マインドフルネスを実践する場として設立しました。今から6年ほど前の出来事になります。

そんな中で、2015年ある時、貝谷理事長よりマインドフルネスの先達をお呼びしてワークショップをしてはどうかという話が持ち上がりました。

現在は名誉センター長の貝谷久宣氏

 

そして、2015年6月にマインドフルネスワークショップはボストン大学教授のステファン・ホフマン先生を皮切りに始まりました。その後、精神医学、仏教、心理学などのマインドフルネスに造詣のある先生たちにお越しいただいています。以来、いろいろな側面からマインドフルネスの理解を深めるワークショップへと成長してきています。ホフマン先生に始まり、藤田一照先生、山下良道先生、蓑輪顕量先生、小池龍之介先生という、5回分のワークショップは第1集に収録されています。熊野宏昭先生の第3回は独立した単行本になっています。

 

そして今回刊行したのがマインドフルネスワークショップ集②です。タイトルは「マインドフルネスを極める」。実際製本が終わり完成した本書が私の手元に届いたとき、「おお!分厚い」という印象をうけました。チョットした辞書ほどあります。そして、その分厚さとともに、本書にはマインドフルネスという文脈へのさまざまな理解や深みがちりばめられています。

本の厚さももちろんですが、内容の熱さも読んでみると分かると思います。私はすべてのワークショップの企画や運営をさせていただいているので、生のワークショップを体験してきました。改めて書籍となりじっくりと言語化されたワークショップの内容を振り返ると今体験しているかのようにその場の息づかいや雰囲気や情景まで目に浮かびます。何とも不思議な感覚に浸る瞬間です。

 

2.極める

 

さて、今回の「極める」というタイトルを鑑みて、私にとっては同世代でもある川野泰周先生のワークショップで印象に残ったお話しがありました。川野先生は精神科医であり、臨済宗の禅僧でもある先生です。そのお話しは精神医学的なものから禅のお話しまで多岐に渡りました。

一つトピックを拾い上げたいと思います。

 

「同じ山頂を違う道で目指す」というテーマについてです。

 

「たとえて言うなれば、山の頂上を目指す登山において、このマインドフルネスという道のりもあれば禅の修行という道のりがあってもいいのではないかということです。その他にも、たとえばヴィパッサナー瞑想があったり、ヨーガがあったり、内観療法があったり、いろいろな取り組み方があるはずです。そして、それぞれの登山道には横の連絡路があってその人の意思一つで、いつでもその時に必要なコースを選択できるのだと私は実感しています。」

(東京マインドフルネスセンターワークショップ集②マインドフルネスを極める 川野泰周 医師として、禅僧として語る 「マインドフルネス」をとりまく動向より)

 

私もその通りだなと思いました。そして、同じような感覚の先生がおられてとても安心しました。

私自身も鍼禅を標榜する東洋医学の先生に師事して、臨済宗式の接心で修行をさせていただいたり、曹洞宗のお寺で坐禅を組んだりすることもしばしばあります。また、アメリカに行きマインドフルネスのリトリートやワークショップにも積極的に参加しています。ヨーガも大好きな実践なので毎日にように実践しています。

それらはまさに、意思一つで、いつでもその時に必要なコースを選択しているという感覚です。もちろん、作法、実践、方法、ガイドはそれぞれ異なっていますがその人その人にあった方法で実践して山を登れば良いのだと本当に思います。山は一つしかありません。それを登る、極めるルートが多数ある。自分にその時々にあったものを選び取りさえすればよいと思います。それは一つのことを集中してみる人もいると思いますし、いろいろと試す中で収束していく人もいるのだと思います。

毎回40人ほどが座る赤坂クリニックの8階にあるワークショップスペース

 

3.アメリカでのこと

 

話が少し変わりますが、先月ニューヨークに行きニューヨークは郊外のリトリートセンターでマインドフルネスの研修を受けてきました。そして、ニューヨークでのマインドフルネスの動向も調べてきました。

ニューヨークは人種のるつぼだけあっていろいろな人種、宗教、文化が混ざり合っています。マインドフルネスもご多分にもれず混ざり合って共存しているように私の目には移りました。ファショナブルで商業的なもの、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)などを真面目に実践しているソサエティ、仏教サンガそのものなど、いろいろな形が入り乱れています。仏教一つとってもテーラワーダ系のもの、チベット系のもの、禅系のものと調べてみるとイロイロな仏教の形があります。

そして、リトリートセンターでのマインドフルネス研修ではサキ・サントレッリ先生によるThe Ruby ―Awakening The Treasure In Your Chest―というタイトルのリトリートに参加してきました。サキ先生はマサチューセッツメディカルスクールの二代目のディレクターの先生です。昨年リタイアされました。

彼のセッションはたくさんの詩でちりばめられたリトリートでした。なかでも13世紀のスーフィー詩人のルーミーの引用が多くの場面で取り上げられました。スーフィーズムはイスラム教神秘主義より始められたそうです。ルーミーの詩はマインドフルネスストレス低減法(MBSR)やマインドフルネス認知療法(MBCT)といったコースのマインドフルネス瞑想の実践の中でしばしば使われます。

もとはイスラム教の詩人の言葉です。また、私が唯一の日本人だったので気を遣っていただいたのだと思いますが、サキ先生は和泉式部の和歌や道元の言葉などもセッション中に引用してマインドフルネスを伝えていました。

 

真実はいくつもあるのではなく、その人その人、その文化その文化、その宗教その宗教、それぞれにありながらも同じものを指し示しているのだと思います。もちろん、マインドフルネスはブッダがその重要性を伝えて広まっていることは間違いありません。ですが、ブッダに限らず、私達人間がもっている普遍的ともいえる真実性は他の宗教や、いろいろな文化の中にも脈々と息づいているとも言えると思います。

 

4.ワークショップ

 

このワークショップ集②に掲載されている内容はそれぞれの道を極めようとしている先生たち言葉や生の教えに溢れています。

マインドフルネスという言葉をキーワードにして、それぞれの先生たちが歩んできた中でのマインドフルネス観がそこにはあります。いろいろな角度からスポットがあてられて、真っ暗闇の山の道を照らしてくれています。それぞれの先生のワークショップのことにも触れておきたいと思います。

今回始めに収録されているのは、伊藤義徳先生の「瞑想にたよらないマインドフルネス・トレーニング」です。心理学の専門家ならではのワークがたくさん詰まった内容でした。

普段のクラスでは行わないワークがあって個人的にイーブスドロップワークがとても興味深い内容でした。

次は川野泰周先生の「医師として、禅僧として語る「マインドフルネス」を取り巻く動向」では精神科医としての視点、禅僧としてのハイブリッドな視点がとても新しく新鮮に映りました。マインドフルネスと禅との交差点にいる先生ならではのお話しや先生自身の体験を伺うことができました。

そして、岡野守也先生の「瞑想の深層心理学としての唯識」では、唯識を通して自分自身の我と宇宙の関係性をより分かりすく解説いただきました。自分たち一人一人が宇宙の子であるという話に感銘を受けました。

さらに、大井 玄先生に「老耄とやすらぎ―苦しみは識別作用に縁って起こる―」では見取りの医師として認知症に長年向き合っている先生のお話しを伺うことができました。生老病死という普遍的なテーマを認知症という先生のご専門の研究と共にお話しがありました。なかでも死ぬということについて参加者との質疑応答は一読の価値があるものだとおもいます。

最後は中野東禅先生による「講話と実践―ブッダの禅は人間性回復の道」というワークショップでした。マインドフルネスの源流から仏教の基本的な考え方まで優しくご教授いただきました。

それぞれの先生方は本当に個性に溢れ充実したワークショップばかりだと改めて感じます。いろいろと書きたいことは山ほどありますが、詳しい内容については『マインドフルネスを極める』に譲ることにします。

 

 

5.終わりに

 

現在、マインドフルネスは大きな流れとなって私たちの生活の中に入り直しています。

入り直しているというのは元々私たちの日本の文化の中にはマインドフルネスは厳然として存在していたからです。そして、今、入り直している中で、仏教から入っている方も医療、心理学、教育、ビジネスから入っている方も、さまざまな方面からマインドフルネスに出会っている方達がいると思います。

今では書籍も山のようにでています。いろいろな立ち位置による視点もあるようにもみえます。しかしながら、私たちが登る山は一つしかないのです。いくつもあると思っているかもしれませんがそうではないと思います。そして、登り方の違いで優劣をつけることは戯論でしかないのでしょう。そんな戯論を展開している時間があるのであれば、一瞬一瞬、やさしく思いやりのある気づきを深めること、一歩一歩山を登る実践をして修行を完成させることにいのちを費やすことが大切だと思います。

もし、道が間違えていれば、自分に合った別のルートを探してみてください。そして頂上を目指して、自分に合った道を登っていただければと思います。

そして、『マインドフルネスを極める』という本書が読者のマインドフルネスの道を探す手がかりになればこれ以上の喜びはありません。

マインドフルネスに興味のある方やこれからマインドフルネスを深く理解したい方は本書を手に取っていただき熟読して本質へと向かっていただければと思います。

本書が読者の皆様にマインドフルネスのより深い理解と実践の一助となれば幸甚でございます。