サラナ サラナ

 

川本佳苗『〈連載〉ぶぶ漬けどうどすか?』 
新進気鋭の仏教学者 川本佳苗こと、元・サヤレー・スナンダの 「ぶぶ漬けどうどすか?」――第3回「『マハーナマッカーラ』はパーリ語ラップ?」
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新進気鋭の仏教学者 川本佳苗こと、元・サヤレー・スナンダの

「ぶぶ漬けどうどすか?」

第3回「『マハーナマッカーラ』はパーリ語ラップ?」

 こんにちは、法名スナンダこと川本佳苗です。2019年が始まり、もう1月も終わってしまいましたね。皆さまはどんな新年を迎えましたか?今年の目標は決めはりましたか?

ディーパンカラ・サヤレーの瞑想合宿のご報告

 わたしの年末年始は、房総半島で行われるミャンマーの尼僧ディーパンカラ・サヤレーの瞑想合宿で通訳するのが慣例です。最近はサヤレーとも慣れた仲でバンバン突っこまれ、「あんた髪型ヘン」と言われました。ちなみにこんな感じでした。合宿中は八戒を守らなきゃいけないからオシャレせず髪の毛ボサってるのにーー。

 

(ToT) ひどい、サヤレー!

 

中央:ディーパンカラ・サヤレー、左:瞑想合宿を企画した「はらみつ法友会」代表の岩倉さん(ウェブサンガデビュー)、右のボサ子:スナンダ

  この合宿では、すてきな浜辺で歩く瞑想もできます。ぜひ、今年の年末はご参加くださいね!そして、帰りのバスターミナルで思わず買ってしまったものが……。だってわたくしカントリーマアマー(カントリーマアムを愛する者)なんですものー。

合宿会場近く、南房総の浜辺

合宿中に設置した仏壇

私のタンハー、カントリーマアムびわ味

 それと、ニュースが2点あります。まず、最近スナンダのツィッターを始めました!かなりアホなことを呟いていますけど、フォローしてくださいね。@Kanae_Sunanda 

 

 二つ目は、昨年12月6日に開かれた「K.N.ジャヤティラカ博士 論文集』刊行記念イベント」のDVDが発売されたことです。トレーラーはこちら【トレーラー1『K.N.ジャヤティラカ博士 論文集 第1弾』 刊行記念イベント】です。スマナサーラ長老と島影サンガ社長、そしてわたくしスナンダという異色メンバーでお送りしています。それにしてもわたし笑いすぎ!

 

 さて、第3回目は「仏教道徳は誰のため?」についてお話しすると予告していました。のですが……、年明けにサンガ宛にスナンダへの感想メールが届いたのです。あんまり嬉しかったので、今回はお返事を兼ねて書こうと思います。どうもありがとうございます!!!(^ω^)

 

 

マハー・ナマッカーラ・パーリについて

 まず、大阪府のA様より、第二回目連載で触れました「『マハー・ナーマッカーラ』というのはどのようなお経なのか」という質問をいただきました。

 わたしが前回、スペルを間違えており失礼しました。 正しくは『ナマッカーラ』または『マハー・ナマッカーラ・パーリ』と言います。

 これは、ブッダゴーサが編纂したとされる、ブッダを讃美する詩偈集です。タイやミャンマーのテーラワーダ仏教圏では、寺院での礼拝時に唱えられます。全部で33偈ありますが、私が修行したパオ僧院では夜の礼拝時に26番目の偈までを唱えます。

 

 これらの偈の、語呂合わせと韻の踏み方がパキパキでめちゃくちゃ美しいんです。ブッダゴーサ、パーリ語ラップかい、とツッコミたくなるほどです。

 

 第一の偈を紹介しますね。わたしの粗訳なので、おかしいところがあるかもしれませんが、ミャンマー留学時代のパーリ語の先生から教わった解釈を基にしています。

 

Sugataṃ sugataṃ seṭṭhaṃ, kusalamkusalaṃ jahaṃ; 

Amataṃ amataṃ santaṃ, asamaṃ asamaṃ dadaṃ. 

Saraṇaṃ saraṇaṃ lokaṃ, araṇaṃ araṇaṃ karaṃ;

Abhayaṃ abhayaṃ thānaṃ, nāyakaṃ nāyakaṃ name.

 

善く進まれたお方(ブッダ)、最高なるお方、善悪を離れたお方

不死なる、寂静なる、比類なきもの(=涅槃)を与えてくださるお方、

この世の人々を避難してくださるお方、執着や諍いを失くしてくださるお方、

恐怖の無い安全な場所へと導いてくださる(この)お方に、私は頭を下げ礼拝します。

 

 いかがですか? 「ブッダマジ最高!」とベタ褒めでしょう? 私の出家した寺院では、読唱時にパオ・サヤドーの録音を再生していました。Youtubeにも音声ファイルがありますね。 ↓ これです!(35秒目から始まります)

ブッダゴーサ「ブッダマジリスペクト!」と大絶賛です。

 

 

 全文は、こちらの『パオ朝夕礼拝読経集』https://www.dhammatalks.net/Books7/Pa_Auk_Daily_Chants.pdf】2ページ目から載っています。でも、わたしが僧院で聞いていたバージョンはこのYouTubeのものではなくて、パオ・サヤドーがもっと若い頃のだったのか、声に勢いもスピードもあってよけいにラップ感が強かったです。

 

テーラワーダ仏教圏の女性出家者について

 Aさんからは「女性の出家はどのような状況にあるのか」という質問もいただきました。これについてお話しするとすごく長くなってしまい、また私も熱くなってしまうので、簡単に説明します。

 

 私が実際に訪れた国は、ミャンマー・タイ・ラオス・スリランカ・ベトナムで、そのうちミャンマーとタイでわたしは長期間暮らしました。これらの国々を見て、ミャンマーの状況はいろいろな点で特殊でした。

 

 まず一つ目は、出家する年齢が低いことです。タイやラオスでは、未亡人や身寄りのない年配の女性が寺院に出家者として寺院で住まわせてもらい、食事の用意や作務をしていらっしゃるケースが多かったです。バンコクのような都市部では、大学を卒業した後、30代までキャリアウーマンだった英語も話せるメーチー(タイの女性出家者)にもお会いしたことがあります。彼女は大変頭の良い方で、瞑想センターで指導にあたっていらっしゃいました。でも、このような方は希少でした。

 

 ミャンマーで、私の留学していたITBMU(国際上座部仏教布教大学)にサヤレー(女性出家者)が毎年20名ほど入学なさっていました。10歳未満で出家する男子が多いことに対し、ITBMUに進学するサヤレー達の出家年齢は、14歳以降または在家女性として大学卒業した後が多いです。それでも、他のテーラワーダ仏教国と比べて若手でしたし、かつ仏教大学に入学する前にすで化学や数学などの専攻で学士号をもっていらしゃる才女が多かったのです。

 

 ふたつ目は、一時出家が盛んなことです。テーラワーダ仏教圏では、どの国でも男子ならば一時出家することは通過儀礼的な行事です。でも、ミャンマー以外の国で女子が一時出家することは珍しいです。一番人気の出家時期は、新年にあたる4月の正月休暇中です。寺院もイモ混みです。その後、雨期の6月にもなると、商店街や病院でネギ坊主みたいな頭の女の子と出会います。オーストラリア人の知人はこの時期に初めてヤンゴンに来て、街にツンツン頭の女の子があふれているのを見て、「わぁ、これが今ミャンマーで流行っているヘアスタイルなのね!」と感心したそうです。パンクかいな

 

 ネギ坊主ほどではありませんが、還俗直後のベリーショートだったわたしの姿を載せておきます。ディプロマの授与式だったので、はりきって浴衣を着ています。

 

還俗直後のスナンダ

 

Kさんからのメール】

 もう一人、ディーパンカラ・サヤレー瞑想合宿の参加者Kさんから、サンガ宛に合宿の感想を送っていただきました。私の関西弁な通訳を気に入ってくださったとのこと、嬉しいです。どうもありがとうございます!

 

 「きっと川本さんはすごく気遣いができて正直なお人なんだろうなと私は勝手に思っています。(完全に妄想ですね)」そんなことないです! 妄想じゃないです! わたしって気遣いができて正直なんですぅぅーーー(この部分、編集者から削除されそう)。

 

 メールを読ませていただいて、Kさんはすごく真面目な人なんだと思いました。真面目だから自己否定してしまうし、より良く生きたいと思って、仏教に興味をもたれたのでしょう。でも、現代社会は競争や欺瞞で満ちあふれていて、真面目な人が生きづらい世の中ですよね。一人だと周囲の力に負けてしまいそうになりますよね。

 

 だからこそ、善き友・法友を大切になさってくださいね。ブッダもそうおっしゃっています。私はなかなか東京へ行けませんけど、瞑想合宿を企画した「はらみつ法友会」では、月例の自主瞑想会や勉強会も開いています。よかったら参加してくださいね。@paramifriend 

 

 次回の第4回連載こそ、「仏教道徳は誰のため?」についてお話しようと思います。でも、ミャンマー仏教で知りたいこと、スナンダに質問したいこと、連載で取り上げてほしいことなどのリクエストがございましたら、熱烈歓迎いたします。また、励ましのお言葉や嬉しい感想なども、メールアドレス[info@samgha.co.jp]宛に件名「ぶぶ漬け」と書いて送ってくださいね!

 

それでは、皆さま、2019年も頑張っていきましょう~。

 

 

 スナンダこと川本佳苗

 

 

 

 

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川本佳苗(かわもと・かなえ)
京都府出身。出家名スナンダ。京都大学東南アジア地域研究研究所研究員。専門は仏教倫理(自殺・自死)と東南アジアの瞑想実践・仏教文化。2008年よりミャンマーの国際テーラワーダ布教大学に留学し、パオ(パーアゥッ)瞑想院で尼僧として修行する。2014年にタイのマハーチュラーロンコーン大学で修士号を取得後、日本学術振興会特別研究員(DC)・ベルン大学宗教学研究所研究員を経て、2017年に龍谷大学大学院で博士号を取得。国内外で広く活動し、”Love Incessantly Flows: Mae Naak, a New Asian Opera Heroine Born outof a Thai Buddhist Narrative“(Contemporary Buddhism、2017)、「パーリ経典に描かれる比丘の自殺と対話の意義」(『別冊サンガジャパン④ 死と輪廻』、2018)など多数の論文を発表。『K.N.ジャヤティラカ博士論文集 第1巻』を翻訳。

Website: https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/organization/staff-2/kawamoto/

 

『K.N.ジャヤティラカ博士論文集 第1巻』

ジャヤティラカ博士論文集 第1巻

 

『別冊サンガジャパン④ 死と輪廻』