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2020.04.06

コラム メディア紹介 編集部

花祭りにはカレーを食べよう

お花見シーズンもコロナ禍で例年とは違った様相となっている2020年4月。

毎年変わらずやってくるものと言えば、お釈迦様の誕生日、4月8日の花まつり!(of 大乗!)。

花まつりと言えばお釈迦様の天上天下唯我独尊のお姿に、甘茶をかけてお祝いするのが習わしですが、「何をおっしゃる仏さん、今はカレーですよ」、ということで、カレー坊主こと吉田武士さんと、吉田さんの敬愛するプラユキ・ナラテボー師の対談の一部を先出し公開。本編は、4月末発売の『サンガジャパンVol.35 食べる』でどうぞ!

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花祭りにはカレーを食べよう

取材・文 森竹ひろこ(コマメ)

撮影 編集部

 

カレー坊主(吉田武士)さんとプラユキ・ナラテボー師。対談はZoomを利用して東京と長崎を結んで行った。

プラユキ 吉田さんは仏教とカレーをからめた活動をしているところが、とてもユニークだと思います。

吉田 自分は仏教に救われたという感覚がすごく根底にあって、それを浄土宗という場にいながらどう伝えていくかというときに、やはりお釈迦様のお話をしないといけないな、ということになりまして。浄土宗では法然上人のお話がメインストリームというか、どうしても強くなっていて、お釈迦さまが後ろになってしまう部分があると感じていました。やはり仏教なので、もっとお釈迦様をみなさんに紹介をしていきたいという思いがあり、そのために、まずはお釈迦様の誕生日の花祭りをもっと宣伝したいと思って。

プラユキ 花祭りですか。

吉田 はい、それで花祭りをもっと親しんでもらうために、カレーを食べ物のシンボルとして定めたらいいのではないかと、「花祭りにはカレーを食べよう」と呼びかけています。

プラユキ なぜ、カレーに目を付けたのですか。

吉田 カレーと仏教は多くの共通点があります。カレーも仏教もインドから他の国を経由して日本にやってきて、独自の変化を遂げました。今では国民食といわれるほど食べられているのも、仏教と似ていますよね。インド、タイ、スリランカ、日本、同じカレーでも国によってかなり違うのも仏教的です。

それに、何よりお子さんが花祭りを楽しみにしてもらえるようにしたいと思って。

プラユキ 子どもはカレーが好きですからね。クリスマスにケーキを食べるのを楽しみにしているような感じで。

吉田 そうです、そうです。それで、小さい時にカレーを食べて、「どうして四月八日はカレーを食べるのかな?」と思ってくれたら、そこで僕は成功だと思っています。

子どもさんに「なんで四月八日にカレーを食べるの?」と聞かれたら、「それはお釈迦様の誕生日だからよ」って。そうしたら「じゃあ、なぜカレーなの?」とさらに問いが生まれるので、「お釈迦様はインドの生まれだからよ」という感じで、お釈迦様にちょっとでも、点でもいいから触れる日にしてもらいたいなと。

プラユキ カレーの話をきっかけにして対話を交わしつつお釈迦様とのご縁を深めてもらうというのはとてもいい発想ですね。

カレー坊主さんのツイッターのバナー(https://twitter.com/curry_boz)

ポスト甘茶

 

プラユキ 花祭りといえば甘茶ですが、吉田さん的にはどういう位置付けになりますか。

吉田 今、カルピスを推そうという流れがあって。実は、カルピスは「カルシウム」と、サンスクリット語の仏教用語「サルピス」を合わせた造語なんです。

プラユキ それは初めて聞きました。サルピスってどういう意味ですか。

吉田 お乳が熟成していくのに五段階あって、その四段階が「サルピス(熟酥じゅくそ)」です。最高位の五段目は「サルピルマンダ(醍醐)」ですが、語感が悪いのでその次のサルピスを採用したそうです。そのサルピスとカルシウムをかけ合わせた造語が「カルピス」で、命名したカルピスの創業者は大阪のお寺の生まれで、一三歳で得度されています。

そういった仏教的な関わりがあるので、花祭りにはカルピスを推していきましょうという声もあるようです。子どもたちはあまり甘茶を好まないので、甘茶の代わりに。

 

方便としてのカレー?

 

プラユキ 吉田さんがカレーを食べる動画とか、ツイッターの写真をときどき拝見しますが、いつも美味しそうに食べているので、見ているだけでハッピーになれますね。

吉田 ありがとうございます。実は、最初は顔を出すのも抵抗がありましたが、思い切ってやりました。そうしたら、見た方たちが「カレーを食べたくなりました」とか、「美味しそうですね」とか言ってくれるんです。

もし、僕がカレーの成分をツイッターで投稿しても、同じ感想が生まれるかというと、それはないですよね。カレーを美味しく食べる映像や写真を見て、カレーを食べたくなる。単純なことですけど、先ほどの自転車屋さんの話と同じで、僕がお釈迦様の教えをいただいて、日々を過ごしているそのままが、「ああ、仏教っていいものなんだね」と思ってもらえるようになればいいなと。カレーは、そのための実験としてやっているというか。

プラユキ 方便のひとつですね。

吉田 そうですね。カレーを美味しく食べる姿を見てもらい、みんなもカレーを好きになるという壮大な実験です(笑)。

プラユキ 今のお話、すごく共感します。よく、後ろ姿で導くとか言われますが、やはり本人が仏教をやって幸せに生きている姿こそが仏教の素晴らしさを伝える何よりもの説得力となるかと思います。

吉田 カレーはそういう意味で、誰が食べても美味しいと思えるシンボルとしても最適ではないかと思います。

 

手放す喜び

 

吉田 僕は仏教の「お布施」が、すごく素晴らしいと思っています。イエス・キリストの誕生日のクリスマスは、お子さんにとってはプレゼントがもらえる日、何かをもらう喜びのある日です。それに対して花祭りは、何かを手放していくことに喜びを感じられる日にできないかなと思っています。今の世の中は、得ることが喜びだということが強くなりすぎて、どうもバランスが悪いのではないかと。

プラユキ なるほどね。タイでは毎朝お坊さんが托鉢に回る姿が日常風景ですが、村人はお坊さんに食事をお布施すると徳を積めるということで喜んでやります。子どもたちも親の姿を真似てかわいい合掌をして、嬉しそうにご飯やおかずをお布施してくれますよ。

吉田 そうそう、本来お布施すること自体が喜びなんですよね。

プラユキ お布施の元来の意味は「与えること」。それによって執着を自然と手放していくことができるという意味もあって、仏教でも大変推奨されている行為ですね。「何かを手放す日」という今の吉田さんのお話は仏教的でとてもいい発想で、ちょっとプロモーションしたいですね。

吉田 いま仏教界も地球環境などに関わっていこうとするなかで、やはり「布施」だとか「徳を積む」というのは、大きな力になるのではないでしょうか。そのシンボルに花祭りがならないかと思っています。

プラユキ それはすごくいい案ですね。

吉田 日本では四月八日は年度変わりの新しい始まりの時なので、手放していくという価値観を示すことは意義があると思っています。それが自分でカレーを作って誰かに食べてもらうといった、小さなところからでもいいのではないでしょうか。

プラユキ なるほど。今の日本では、お布施はお寺やお坊さんに寄進するものだというイメージが強すぎる感じがしますね。お布施はサンスクリット語でダーナ、日本語の旦那さんはこのダーナを語源としています。旦那さんは家族に無償の奉仕をする役割を担っているわけですね。このダーナの「与えること」というお布施本来の意味合いを伝えていくことと花祭りをセットにするのは、すごく意義があるのではないでしょうか。

ちなみに、私はよくお布施をして徳を積むことを、「心の世界に参入するイニシエーション」だとお伝えしています。普通は何かをもらったら得をする、与えたら損だと考えられている。しかし仏教では与えることで徳を積めると教えている。与えることで心に喜びを感じられるのは、心の世界が見えてきた成熟した人間の証です。目に見える世界だけではなく、見えない心の世界にもちゃんと触れられて、与えている時の心の喜びが実感できるようになります。自業自得の本当の意味も理解して、自分のなしたことをちゃんと自覚し、その瞬間瞬間に心に起こっていることを感じられるようになるわけですね。

吉田 それを感じるのが四月八日ですね。僕は、花祭りにカレーを食べるとか、お布施をするとかいうのを、ムーブメントというより文化にしたいですね。ハロウィーンのようにワーッとムーブメントになって、何か起こったら下火になっていくのではなく、これからずっと続いていく文化として、お釈迦様の誕生日をもっと日本に広めていきたいです。

プラユキさんは、これからの抱負とか、おありですか。

プラユキ 私としては基本的にご縁にお任せして、与えられた任務に全力で打ち込んでいこうと思っています。私自身、仏教と出会うことで苦しみから救われました。先ほども話しましたが、苦しみから楽になっていく確かな理論と方法があることを確信できました。でも周りを見渡せば、悩んだり苦しんだりしている人がまだまだ多いので、少しでも私の得られた知見を共有しながら、みなさんが楽になっていただくお手伝いをしていきたいと思います。これからもご縁で何らかのオファーが来たらそれに素直に乗っていこうと思います。そうそう最近、ある役者さんから「一緒にワークをやらないか」というオファーがきました。演劇と瞑想を組み合わせたワークショップなどやってみても面白いかもしれないですね。

吉田 それは楽しみです。

プラユキ 吉田さんは仏教の明るさを、説得力をもって広げていく大きな役割をはたされているような感じがしますよ。

吉田 ありがとうございます 僕はプラユキさんのお人柄にひかれています。

プラユキ おたがいさま、がんばっていきましょう。

 

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プロフィール

プラユキ・ナラテボー◎ Phra Yuki Naradevo

一九六二年、埼玉県生まれ。タイ・スカトー寺副住職。上智大学卒業後、タイのチュラロンコン大学大学院に留学し、農村開発におけるタイ僧侶の役割を研究。一九八八年、瞑想指導者として有名なルアンポー・カムキアン師のもとで出家。以後、開発僧として、瞑想指導者として活動。著書に『「気づきの瞑想」を生きる』(佼成出版社)、『苦しまなくて、いいんだよ。』(PHP研究所、Evolving[Kindle 版])、『自由に生きる』(サンガ)、監訳書に『「気づきの瞑想」で得た苦しまない生き方』(カンポン・トーンブンヌム著、浦崎雅代訳、佼成出版社)、共著に『仏教サイコロジー』(サンガ)、『脳と瞑想』(サンガ新書)、『悟らなくたって、いいじゃないか 普通の人のための仏教・瞑想入門』(幻冬舎新書)などがある。

公式サポートブログ「よき縁ネット」 https://blog.goo.ne.jp/yokienn

ツイッター https://twitter.com/phrayuki

 

 

吉田武士(カレー坊主)◎よしだ・たけし

一九八四年、長崎県生まれ。浄土宗白龍山長安寺(大村市武部町)僧侶。北九州市立大学卒。カレー版子ども食堂「いきなりカレー」主宰。「全国カレー好き僧侶の会」会長。カレーを通じて仏教を伝える「カレー坊主」として活躍。

ツイッター カレー坊主@吉田武士(僧侶Lv.9)

https://twitter.com/curry_boz

 

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