セルウィラ寺院の新しいムーンストーンに立つ修道僧
今回は、写真集『菩提の樹』について解説します。
スマナサーラ長老から
「佛教遺跡としてアヌラーダプラの菩提樹はインドから伝えられたものとして信頼できます」
とのご指摘をいただき、スリランカ撮影をしてきました。
紀元前300年頃にインドブッダガヤの菩提樹の分け木が佛陀遺徳のシンボルとしてもたらされ、
今日まで命脈を保ち、代々聖木としてスリランカをはじめアジア近隣諸国の寺院等へ分け植え続けられています。
この菩提樹が醸し出す慈悲の心に思いを込めて、本書のタイトルとしました。
セルウィラ寺院の新しいムーンストーンに立つ修道僧バラレー・ラタナサラ長老です。
ムーンストーンとは、古来からの伝統的デザインをした石板で、外周に象・馬・ライオン・牛が輪廻転生する様子が描かれています。
象は毎日餌を求めて歩き生きる苦を、馬は日本でも同じ馬齢を重ね老いる苦を、ライオンはサバンナの雄者ながら病気に弱く病の苦を、牛はインド社会で大切にされ不自由のない生活をしながらも死の恐怖に苦しむシンボルとしてこの四体によって我々衆生の生老病死の四苦と輪廻転生していく様子を表現しています。
寺院の入口に設置されるムーンストーンはこの四苦を超えてその先に蓮花の世界が展開し、清浄な心をもって本堂・本尊へ参拝せよとの道標なのです。
修道の僧がまさに蓮花に立ち先導者となってみなさんを本書の中へと誘う思いを込めて表紙としました。
キャラニヤ寺院外壁の装飾です。衆生が生きる苦しみを体現している様子で、ハイライトを浴びて輝き喜んでいるのも一瞬だけで影の中に変化していく姿としてご覧ください。
本写真集のテーマとなる菩提樹三様の姿です。
お釈迦様が沐浴したとされる場所にその慈悲の光風を想わせるように凛としてたたずんでいます。
ジャヤワルダナ元大統領が荼毘に付された記念すべき場所です。
黄金の支柱によって支えられ2300年以上の命脈を保つ佛陀遺徳のシンボルであり、スリランカの宝、否、世界の宝ともいえる菩提樹です。根幹は右端のコンクリート柵の中に保護され、参拝者の立ち入りはもとより象をはじめ動物からの侵入も防いでいます。
インドブッダガヤの現在の菩提樹はこの分け木であり、いわば本家に里帰りしているのです。
2300年前にアショカ王の娘サンガミッタ妃によってインドブッダガヤからスリランカへ運ばれ、最初にこの地に仮置きされ、この地から現在のアヌラーダプラへ運ばれました。この地を記念して最初の分け木が植えられ今も慈影を移しつづけています。
この見開き3カットの菩提樹が佛陀の遺徳を今に伝えていることの証であり、本書全体のテーマであることを感受いただければ幸いです。
83頁は、スマナサーラ長老が住職を務めるキリタラマヤ寺院での撮影です。右側の背景の絵(少女たちの後ろ)はサンガミッタ妃がこの分け木の菩提樹を招来している図であり、2300年前の感動を表現しています。原画(Solias Mendis作)は、キャラニヤ寺院にあります。
2010年8月内戦終結直後に撮影したものです。コロンボから軍用機でジャフナ(スリランカ最北端の地)に入り、砲弾の跡も生々しい市街地を目にしました。人々は平和の訪れを喜び、そこに安堵の表情を読み取りました。
98頁は爆撃により一帯が破壊され、唯一戦災から逃れた自宅に避難していた家族が戻り、母を囲んで家族団欒を噛みしめ平和の尊さを感じた一枚です。
お楽しみで頁を捲ってください。又、長老のお寺の信者さん、日曜学校の生徒さんなどの写真もあります。
118頁以下の「撮影手控え」を参考にしながらスリランカの慈しみの世界をお楽しみいただければ幸いです。
その1「仏教入門」は【コチラ】
その2「『関谷巖 アジア写真集「慕咲‐アジア・祈りの情景」』詳細解説」は【コチラ】
その3「『「日めくり ブッダの聖地」スリランカ編 』に寄せて」【コチラ】
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