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「心の本質」に迫る『ブッダの実践心理学』 その7 (最終回)
⑦瞑想と悟りの章〈九〉
ブッダの実践心理学〜アビダンマ講義シリーズ第七巻・第八巻[合冊版] 瞑想と悟りの分析(サマタ瞑想編・ヴィパッサナー瞑想編)〜

ブッダの実践心理学 アビダンマ講義シリーズ 第七巻・第八巻[合冊版]瞑想と悟りの分析(サマタ瞑想編・ヴィパッサナー瞑想編) アルボムッレ・スマナサーラ/藤本晃[著](サンガ、2017 年)
最後に、因果の理に沿って悟りへの道を学びます。
集中力と禅定を育てる止瞑想と、それを基に悟りに向かう観瞑想のうち、まず止瞑想の対象40種類(四十業処)を紹介します。が、本当は40項目の中で禅定が生じるものはあまりありません。多くは、身体の中身や死体などを観察することによって悟りに向かう心を養うものです。
色界第四禅定まで熟達したら神通力も身につくかもしれません。
その説明もしてあります。教義説明の取りこぼしはまったくありません。
悟りの説明も厳密です。預流果から阿羅漢果まで4段階の悟りのうち、特に最初の預流果に悟るときの心の状態、悟った瞬間の心の状態、直後の心の状態と、すべてにわたって明確に説いています。
阿羅漢果まですべて説き終わって、『アビダンマッタサンガハ』は終了します。
ここまで、初学者にただ単に仏教の全教義の目次を示しただけなのですが、それだけでも素晴らしい教育システムだと分かります。まず、一片の曖昧さもなく世界と自分の本当の姿を教え、では自分はどうすべきかと考える弟子に、こちらが正しい道だと、心を育て、人格を磨いて、最後には悟りを開くまで、明快に解き明かすのです。智慧の教えたる仏教の面目躍如です。
『アビダンマッタサンガハ』の講義録を本にするに当たり、タイトルを『ブッダの実践心理学』と名付けたのはスマナサーラ長老です。仏教は初めから完成された完璧な教えで、その内容も心理学はもとより物理学や生物学まですべての学びを包括するほど一切知のものなのですが、一番大事なことは、このような膨大にして深遠な、これまで誰も知り得なかった知識が、単に知的欲求のためにあるのではなく、道徳を養い、人格を育てるためにあるのだということです。
学んだ人がそれによって心を清め、悟りを目指すために、ブッダが真理を説いたのです。
『アビダンマッタサンガハ』や『ブッダの実践心理学』を読んだ人が「なるほど」と納得して、「じゃ、俺もいっちょうがんばってみようかな」と、元気に心を向上させることが目的なのです。実践するための、役に立つ学びなのです。
仏教「と」心理学のコラボが始まる
しかし、如何せん、仏教のこのような圧倒的な知識は、元々は悟りを目指す出家の弟子に向けたものです。東洋的な親密な師弟関係の中ではばっちり効を奏しますが、そのような感覚が薄れ、学びのシステムも西洋から輸入してしまい、もろに西洋かぶれになってしまった現代日本人には、どのようにアプローチすればいいでしょうか。
一方の「西洋」心理学は、現代にふさわしい学びのシステムをもち、単に知識として学ぶだけでなく、世のためになるように、苦しみが減るようにと、実践的にさまざまな分野で日夜がんばっているのですが、こちらは治療すべき疾患=心の正体を正しく把握できていなかったりします。
では、仏教と心理学がコラボすればいいのではないでしょうか。仏教も心理学も、本来とてもオープンな学びと実践のシステムをもっています。すぐにでも協働できるはずです。
と思ったら、もうあちこちで始まっているみたいです。学会もできているようです。十年来の研究と研鑽を積んだ「日本仏教心理学会」が正式に学会として設立されて、もう2年目になります。
私もさりげなく会員の一人です(会名の「仏教心理学」については、「仏教『の』心理学」か「仏教『と』心理学」なのか、英語名が発表されていないのでどちらかまだ分かりませんが、個人的には「仏教『と』心理学」の方が、より間口も広くて相互協力もしやすくて良いのではないかと思います)。
「哲学(学問)は何かの役に立つためにするものではなく、それ自体が高度な知的遊びなのだ」などとうそぶいていられた時代もありましたが、その代わり、しっかり学んだ人は道徳的に立派になり、人々が困ったときに適切にアドバイスして苦しみをなくし、正しい道に導くだけの人格者でなければなりませんでした。その人の学びは、結局、役に立っていたのです。誰も彼もがそこまでうまくはいかないでしょう。かといって、「お金が儲かるかどうか」だけが「役に立つかどうか」の基準では、もちろんありません。今でも、一人一人がそれを学ぶことによって自
分の人格を向上させることができるかどうか、その学びがその人の人生に役に立つかどうかが、それを学ぶべきかどうかの一つの基準だと思います。
ブッダの教えを学ぶと人格が成長し、得をするのは間違いありません。私も関わった『ブッダの実践心理学』シリーズがその一助になれば幸いです。
(本記事は2010年刊行『サンガジャパンvol.3「心と仏教」』からの抜粋です。「日本仏教心理学会」は2018年現在、設立10年目です)
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