社長ブログ(ほぼ毎週金曜日更新)
『ダンマパダ法話全集第十巻 第二十六 婆羅門(バラモン)の章』
『ブッダの実践心理学』シリーズのような嬉しい企画が始まった。全十巻本の『ダンマパダ法話全集』だ。今回は、その話をしよう。
この全集はテーラワーダ仏教協会の佐藤哲朗さんの発案で始まった。そして佐藤さんの提案で、金谷真さんの絵画作品をカバーに使った。おかげで今までのサンガにはない雰囲気の本になったと思う。
ブッダの言葉を携えて後藤一敏さん登場。
話は飛ぶが、先日、サンガとけっこう縁の深い後藤一敏さんが、ある用件を携えて東京オフィスに突然現れた。
鎌倉にある、大仏で有名な高徳院に建立されているスリランカのジャヤワルダナ元大統領顕彰碑にはブッダの言葉が刻まれている。
“Hatred ceases not by hatred, but by love.”
(ダンマパダ 5)
「人はただ愛によってのみ憎しみを越えられる
人は憎しみによっては憎しみを越えられない」
法句経五
鎌倉高徳院に建立されているジャヤワルダナ前スリランカ大統領顕彰碑
第二次世界大戦後の日本の主権が回復されたサンフランシスコ講和会議で、ジャヤワルダナ前大統領(当時は財務大臣)は、このブッダの言葉を引きつつ演説をした。
ブッダの言葉が日本を救ったのだ、と言ったら言い過ぎだろうか。
後藤さんはこの事実を日本の次世代へも伝えたいという願いから、ジャヤワルダナ元大統領顕彰碑を紹介するパンフレットを一万部作りたいという話だった。特に修学旅行に鎌倉に訪れる中学生などに、このパンフレットを配りたいのだという。
このブッダの言葉は僕も前から知っていたが、この言葉を世に広く広めたいという後藤さんの願いを聞いて、僕は感動した。
お釈迦様の言葉、ダンマパダ第五の偈を前面に出し日本を救ってくれた、ジャヤワルダナ大統領には深く感謝しても感謝しきれない思いだ。
ブッダの言葉で、戦後の日本は復興につながった。利害関係に明け暮れる国際間の各国の現状を見るにつけ、その思いは一層深まる。
ポスト・トゥルースとブッダの言葉
今回の全集は、第十巻から刊行してのシリーズ化だ。第十巻は第二十六 婆羅門(バラモン)の章(第383偈から423偈)の解説だ。
婆羅門の章は覚りに対する法話で、いきなりハードルは高い。
今回は、その中でもダンマパダ400を紹介したい。
知識の限界
Knowledge cannot reveal truth
知識は心を汚す
400
Akkodhanaṃ vatavantaṃ
Sīlavantaṃ anussadaṃ
Dantaṃ antimasārīraṃ
Tamahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ
400
つつしみありて戒を持し
瞋ることなく欲増さず
最後身をば保つ人
そをバラモンと我は説く
(和訳 江原通子)
この偈の解説の中に、こんな言葉がある。
「決して達しない目的のために、曖昧中途半端の知識を使ったり、貪瞋痴の感情に悩まされたりして生きることには、意味がないのです。だから、仏道を歩む人々は、存在目的という次元を破るのです。」(同174頁)
何が真実で、何が不真実なのか、わからない。混とんとした世の中にあって、真実は探せば探すほど、不真実かもしれないし、不真実を暴けば暴くほど、もしかすると真実かもしれない。この俗世にあって、このお釈迦様の言葉は、まさに金言だ。
ユヴァル・ノア・ハラリはヴィパッサナー瞑想を実践していて、観察することの達人だと思うのだが、彼の最新刊『21Lessons』(河出書房新社刊)の中の「17ポストトゥルース」にこんなくだりがある。
「実際には、人間はつねにポスト・トゥルースの時代に生きてきた。ホモ・サピエンスはポスト・トゥルースの種であり、その力は虚構を創り出し、それを信じることにかかっている」(302頁)
彼は自分で仏教徒とはいっていないが、彼より2600年以上も前に、お釈迦さまはまさに人間のありよう、この世に真実はないという真実を、暴いていたのだ。