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2017.07.11

webサンガジャパン

ティク・ナット・ハンの軌跡 その1「はじめに」

『Webサンガジャパン』スタート

サンガジャパン編集部では、NHKこころの時代「特集 禅僧ティク・ナット・ハン」の反響を受け、

複数回に分けティク・ナット・ハン師の半生をご紹介いたします。

 

ティク・ナット・ハンの軌跡 その1「はじめに」

ティク・ナット・ハン(タイ*1)はベトナムに生まれて出家し、ベトナム戦争を契機として内面と社会の両方にかかわる実践仏教に目覚め、戦争に伴う現実の苦しみに深くコミットした。しかし仏教の教えにもとづき中立的立場を守ったがゆえに、国を追われ永くフランスに亡命することになった。

フランスの地では新たに僧院・瞑想センターであるプラムヴィレッジを建設し、現在に至るまでそこを拠点に仏教の実践を広めてきた。彼の半生は、仏教史の中でも西洋と東洋を行き来する非常にユニークな流れを形成し、ブッダの遊行の現代版を髣髴とさせる。

その教えと実践は、テクノロジーの恩恵に乗って全世界に敷衍し、世界各地でリトリートや瞑想会、講演会が、彼自身と弟子たちによるものも含めて、つねにどこかで開催されている。

また瞑想実践をともにするグループ(サンガ)を重んじるプラムヴィレッジの伝統にもとづくマインドフルネス実践の拠点として、プラムヴィレッジを含めた七か所の僧院のほか、世界中に千を超える在家のサンガが存在する。

タイの思いは、これらのサンガネットワークがマインドフルネスと慈悲の実践によって世界を変容させる力に育っていくことだろう。

現在90歳(2017年現在)になるハン師の半生をおもな流れに沿って俯瞰すると、以下のように要約されるだろう。本稿ではこれに沿いつつ、各時期のおもな出来事を小見出しによって区切りながら、彼とそのサンガの歩んだ道を読者とともに過去から現代に向かって旅してみたい。

 

① 出生から出家まで。仏教改革と社会活動に集中した若き修行僧時代(1926~1962)。

② ベトナム戦争のさなか、アメリカ留学とベトナムへの一時帰国を通して国境を超えた行動する仏教(エンゲージド・ブディズム*2)の本格的活動開始の時代(1962~1966)。

③ フランスへの亡命とベトナム難民の支援活動、スウィートポテト・コミュニティ形成後、プラムヴィレッジ創設準備までの時代(1966~1982)。

④ プラムヴィレッジを拠点に、世界へ広がっていく活動。講演やリトリート、著作を通じて広がっていくサンガの時代(1982~2000)。

⑤ アメリカをはじめとする各地の僧院や瞑想センターの創設と定期的な巡業、ベトナムへの帰国、政治・ビジネス・教育など多くの分野にまたがる世界的規模での行動する仏教活動の時代(2000~現在)。

 

*1「タイ」  ベトナム語で「先生」「師」の意。ティク・ナット・ハンは、親しみを込めてこの愛称で呼ばれることが多く、また自らもタイと呼ばれることを好んでいる。自分自身を指すときにタイと自称することもある。

*2「エンゲージド・ブディズム」Engaged Buddhism  社会参画仏教、関わる仏教とも呼ばれる。初めてこの語を使用したのは、タイ国のスラク・シワラクサ氏といわれる。

 

執筆:島田啓介(ゆとり家

(つづく)その2 その3

 

本記事は、『サンガジャパン19号』からの引用です。

サンガジャパンvol.19「ティク・ナット・ハンとマインドフルネス」