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おおえまさのりさんのこと
『吉福伸逸アンソロジー』刊行記念イベントを下北沢で開催
『静かなあたまと開かれたこころ――吉福伸逸アンソロジー』(サンガ刊)の刊行記念イベントを東京・下北沢の本屋B&Bで、10月27日(日)に開催します。
出演は、おおえまさのりさんと田口ランディさん、それに本書を企画編集した堀渕伸治さんです。
僕が吉福さんと直接お会いしたのは2012年の4月、東日本大震災の翌年、田口ランディさんの紹介だった。(ランディさんノート)
かかってきた電話の第一声は「川島さんは、吉福伸逸さんという方をご存じですか?」
たしか「もちろん知っています。でも面識はないです~」と答えたような記憶。
僕にとって、読書体験として、吉福さんが訳した本の数々はとても重要な位置にあるのだけど、直接にはあったことはなかったし、彼が開催するワークショップにも参加したことはなかった。結局、参加しないうちに吉福さんは亡くなってしまったのだけど、今になって関係の人たちの話を聞くと、一度参加すればよかったなと思ったりもしている。
青年時代の吉福伸逸さん
吉福さんという人は多面的な人で、とらえどころがないのだけど、人によって語ることが違う。優れたカウンセラーと語る人もいれば、まるでカルト宗教のグルのように言う人もいる。豊かな包容力をたたえた父のように言う人もあれば、容赦なくウィークポイントを指摘して追い詰める人という人もいる。無名著名問わず色々な人に影響を与えた吉福伸逸という人は、いったいどんな人だったのか。2013年に亡くなる1年前に知り合っただけど私には、知りようのないところがあるが、70年代から80年代のスピリチュアルな状況の重要人物を、もっと知ってみたいし時代に影響を与えた人のありようを知りたいと思う。
ということで、今回のイベントは、吉福さんの立ち上げたトランスパーソナルに詳しく、最晩年に対談をした田口ランディさんと、吉福さんの青年時代と同じ時空を生きたおおえまさのりさん、そして吉福さんととても深く密な関係を持っていた堀渕伸治さんの3人を通して、吉福伸逸という人の姿とその時代を感じたいと思って企画したのです。
いわゆる伝説のレジェンドのおおえまさのりさん
今回の目玉はおおえまさのりさんの出演です。
このイベントは最初、まずサンガと吉福さんの縁をつないでくれたランディさんにお願いして、そして『世界の中にありながら世界に属さない』の帯に文章をいただいた松岡正剛さん(千夜千冊でも紹介していただいた)をお呼びしようと思っていたのだけど、松岡さんがどうしてもスケジュールが合わず、どうしようと思っていたところにひらめいたのが、おおえまさのりさんだった。
松岡さんはなにしおう現代のビッグネームだが、おおえさんは(マニアックな方向ではあるけど)それを超えるサプライズだと思う。まさに本当のレジェンドだからだ。
いまの若い人は知らないかもしれないけど、おおえさんは日本のスピリチュアル・カルチャー(というか平たく言うとヒッピー文化。ご本人はそうおっしゃらないが)の中心人物で、間違いなく立役者の一人。
おおえさんの軌跡については2013年の著書『魂のアヴァンギャルド』(2013年、街から舎)に詳しい。
この本は名著と言ってよく、60年代から70年代にかけてのアメリカのカウンターカルチャーの様子が、その渦中から生き生きと語られています。映像作家として渡米したのは1966年、時代のターニングポイント1967年、68年を渦中で過ごし、69年のウッドストックの直前にビザが更新できずに帰国している。活動拠点は西海岸ではなく東海岸、ニューヨークが舞台。アレン・ギンズバーグやティモシー・リアリーが登場し、ニューヨークでもbe-inがあったことなど、当事者の視点で語られている。そしてアシッド体験のメモなんかは読むだけでとても素敵だ。
太田出版から発売されている『スペクテイター』の第44号「ヒッピーの教科書」(2019年7月刊)は、とてもよくまとめられた特集で、ビートからヒッピーへの流れがわかる。良く調べてあるし。おおえさんはこの中に出てこないようだが(見落とし散る可能性もあるが)、当時、状況にコミットしたいろいろな人がいたに違いなく、その中の代表的な一人がおおえまさのりさんということになります。
『魂のアヴァンギャルド』と「ヒッピーの教科書」の2冊で、カウンターカルチャーについてはほぼフォローできるのではないかと思う。
『魂のアヴァンギャルド』の第3部では、「いのちの祭り」というイベントのことが語られている。チェルノブイリ原発事故の衝撃から生まれたこのイベントは日本のスピリチュアル・カルチャーにとってエポックとなるもので、1988年に開催されその後も、断続的に開催されている。ワイアードの記事があるので、参考までに。
https://wired.jp/2012/11/30/inochinomatsuri/
おおえさんが2012年の「いのちの祭り」のために上梓された『未来への船』(2012年、いちえんそう)は、3.11後の世界への祈りが込められている。
仏教に絡めていうとおおえさんは『チベットの死者の書』(1974年、改訂版2004年)を講談社から翻訳出版している。
(写真は2004年の改訂版)
これはチベットブームの起きるはるか前に出版されたけど、読みやすさと装丁の美しさで、それ以降の本とは一線を画している、と個人的には思っています。
おおえまさのりさんの現在
ご自身のHPで日記を書き続けている。
ヴィパッサナー瞑想やブッダの知見への洞察、鈴木大拙の表現への批判的注釈など、仏教の深い造詣でかたられる言語の同時代性を感じるわけです。すごい。
ブログを読み、本を読み、すっかり感銘を受けてしてしまったのです。
僕とおおえさんの接点は直接にはないけど、「いのちの祭り」が2000年8月に鹿島槍スキー場で開催されたとき、友人がコミットしていたのもあって、参加した。思うところがあって一晩テントを張っただけで帰ってきたのだけど、個人的にはとても重要な意味を持っている。
おおえまさのりさんと、吉福伸逸さんの対談は1981年に平河出版の雑誌で「変貌するカリフォルニア」があり、当時のニューエイジカルチャーの事情を伝えていて貴重な記事です。なのだけど、今回の本では紙幅の関係と、対談としてはおおえさんの発言が少なくてアンバランスに感じたので、残念ながら収録を断念しました。
今回のイベントでは、ぜひ吉福さんのこと、カウンターカルチャー、日本のスピリチュアル・カルチャーをおおえさんに語っていただきたいと思っています。
2019年10月27日(日)下北沢の本屋B&Bにて開催
【出演】おおえまさのり×田口ランディ×堀渕伸治
【日時】10月27日(日)15:00~17:00 (14:30開場)
【場所】本屋B&B
http://bookandbeer.com/event/20191027a/
次回のブログは本の編集スタッフの小川ひろみさんの寄稿をお伝えします。→こちら
(編集・川島)