編集部
テーラワーダ仏教日本定着の立役者の死
去る7月19日
鈴木一生さんが亡くなった。享年71歳でいらした。
長らく人工透析を続けておられて、体調が悪いのは存じていたが、たまにお電話でお話しして元気な声を聴かせていただいていたので、突然の訃報に驚いた。
亡くなられてひと月が過ぎ、49日にはまだ少しあるが、一生さんのこと、お通夜に列席した時のことなど書かせていただく。
一生さんのこと
鈴木一生さんとは、2014年に刊行した『仏教瞑想ガイドブック(別冊サンガジャパン1)』の取材で初めてお会いした。多摩市のご自宅に伺っての取材だった。
この本は仏教瞑想の概観と同時に、日本のテーラワーダ仏教の現在を紹介する意味もあり編集していたのだが、それには鈴木さんへの取材を欠くことはできないという、社長・島影の発案だった。
鈴木一生さんは、1980年代の終わりにスマナサーラ長老と出会う。
長老との対話を重ね、瞑想修行を重ねるなかで、長老とともに日本テーラワーダ仏教協会を立ち上げ、テーラワーダ仏教の熱心な支援者になっていかれた。
真剣な法華経信者だった一生さんがテーラワーダ仏教に軸足を移すまでの、その間の心のありようを、とても豊かに生き生きとお話しいただいた。
テーラワーダ仏教は、出家比丘が修行して解脱を目指す、と単純化して語れるものではない。
出家比丘のサンガがあり、そのサンガを支える在家があり、サンガと在家を通底する価値観がある。在家者の信頼と支援がなければサンガは成り立たない。
テーラワーダ仏教とは、そういうトータルなシステムなのだということを、一生さんのお話とあり方を通して伝えていただいた。
取材の後も折に触れお電話で話す機会があったが、一生さんは本当に日本にテーラワーダ仏教が根付くことを願っておられた。スマナサーラ長老の活躍を喜び、マハーカルナー禅師の活動に期待を寄せていた。
マハーカルナー禅師は、毎週都内でアビダンマ勉強会・法話会を開催して精力的に活動しているが、その土台をつくったのも鈴木一生さんだ。サンガジャパンへの寄稿はあるが、まだ本を上梓いただいていない。
一生さんとの最後の電話は、昨年末だったろうか、禅師と進めている本の話題だった。
早く形にしてほしい。それが私への一生さんの遺言となってしまった。まだその約束は果たせていない。
スマナサーラ長老の法話
7月27日に開かれたお通夜には、鈴木さんの功績の深さを物語るように、テーラワーダ仏教と日本仏教の関係者が大勢参列した。
アルボムッレ・スマナサーラ長老、ウィセッタ・サヤドー、オバサ・サヤドー、マハー・カルナー禅師、ヤサ長老と、東京で活動するテーラワーダの長老たちが顔をそろえた。このような機会はそうそうないのではないだろうかと思う。
スマナサーラ長老が弔辞として法話された。ここに抜粋して採録させていただく。
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仏教は人間に前を向いて生きて行きなさいと言ってます。鈴木さんも生前はこわいほどに前向きでした。何か新しいことをしなければ、気が済まないというものすごい明るさがありました。
大胆なこと、ほかの人では尻込みするようなことでも、何のことなく、決断する方でした。
本日は仏教関係、宗教関係の方々がお集まりです。なにか役に立つお話をしたほうがよいだろうとのことですので、少しお話をさせていただきます。
われわれ生まれた者はこの世を去っていくときに、すべて捨てていかなくてはなりません。ブッダはそういわれました。私たちはそれを念頭に置いて、活動しなくてはいけません。
なに一つにもとらわれないで、前に進む。捨てて、捨てて、捨てて、前に進まなくてはならない。
私の一日はどうなのかと観察しなくてはいけない。今日はどうだったのかと自分の成績表を毎日つける。○(まる)か、◎(にじゅうまる)か、×(ばつ)かと。
毎日◎(にじゅうまる)になるように生きなくてはいけない。
人生とはなんなのか。生きるとはなんなのか。死ぬために生きているのか?
私が言いたいのは、人間に生まれるのだけど、人間で死んではいけないということです。人間より優れた性格をもって死ななくてはいけない。
そのためにはどうしたらいいか。それはいたって簡単です。
私たちの業が、毎日、宿題を与えてくれます。毎日自分に与えられる宿題を、きちんとこなさなくてはなりません。
兄弟が喧嘩を売ってくるかもしれない。それは喧嘩を売られているのではないのです。宿題を与えてくれている。この問題をどうやって乗り越えますか?
奥さんが何か言う。この方が私に宿題を与えている。
会社でトラブルがある。それはトラブルではないのです。人格を向上するために、宿題を与えられているのです。
毎日、毎分かもしれない、見事に業がそれを与えてくれるのです。
多くは宿題に失敗します。善業が悪業にかわる。
仏教徒は宿題に合格しなくてはいけないのです。
答えは簡単。
より明るく、より優しく、一切の生命を慈しんで。
いつでも、どうやってベストの結果を出せるか。
鈴木一生さんのご冥福をお祈りいたします。
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そしてお釈迦様が涅槃に入られたとき、帝釈天が唱えて礼拝したお経を読誦して終了した。
比丘方、参列者みながお焼香をして、
お通夜でこころが温かくなり、勇気を頂くとは、さすがテーラワーダ仏教と、変な感動をして、焼香をさせていただいた。
ご冥福をお祈りいたします。
合掌
(編集 川島)