イベント紹介 編集部
身心変容技法オンラインセミナーを開催するにあたって
身心変容技法オンラインセミナーを開催するにあたって
身心変容技法会代表・鎌田東二
身心変容技法は鎌田東二氏ほら貝から始まる
セミナー参加お申し込みは【コチラ】
セミナーの詳細・解説ページは【コチラ】
身心変容技法という人類史の蓄積を現代に生かす
新型コロナウイルスの感染拡大により、わたしたちの行動形態、生活様式、社会体制は大きく変化しています。withコロナの時代に、わたしたちが取り得る行動や生き方に、人類史の中で錬成されてきたさまざまな「身心変容技法」というものを取り入れて活用してほしいというのが、この「身心変容技法オンラインセミナー」を開催したきっかけです。
Covid-19と名づけられたウイルスのことだけでなく、近年、自然災害の多発と被害の甚大さは深刻な状態に達しています。加えて、日本は世界に先駆けて、超高齢化社会・多死時代に突入し、社会不安が増大しています。そこにおいて、さまざまな喪失を経験した人々のグリーフケアやスピリチュアルケアの必要性も自覚されてきています。
現代人が抱え込まざるをえない苦悩やグリーフ(悲嘆)やスピリチュアルペイン(精神的・霊的な深い痛み)をしっかりと受け止めて、そこから新たな地平と抜け出ていくための伝統的な修行(修業・修法)やケアのワザ(技術と知恵)として、わたしたちは「身心変容技法」に着目し、それを実際の生活や生き方に活かしてほしいと、この10年ほど「身心変容技法研究会」という研究活動の場とネットワークを維持してきました。
この研究会は、東日本大震災が起こった2011年にスタートしました。最初は、科学研究費補助金(基盤A)を得て、京都大学こころの未来研究センターで、4年間「身心変容技法の比較宗教学-心と体とモノをつなぐワザの総合的研究」を行ない、続けて次の4年間を主に上智大学グリーフケア研究所で「身心変容技法と霊的暴力-宗教経験における負の感情の浄化のワザに関する総合的研究」を行ない、現在に至っています。
古代から宗教・文化を通じて伝承されてきた変容をもたらす叡智
「身心変容技法」とは、「身体と心の状態を当事者にとって望ましいと考えられる理想的な状態に切り替え変容・転換させる知と技法」を指します。わたしたちの生活文化に身近な仏教や神道や儒教や道教にも、またキリスト教やイスラームにも、それぞれの宗教伝統のなかで錬成されてきた「身心変容技法」がじつにゆたかに息づいています。
そもそも、古来、人間が活動する宗教・芸術・芸能・武道・スポーツ・教育などの諸領域で、いろいろな「身心変容技法」が編み出されたのです。たとえば、祈りや祭りもそうですし、元服や洗礼や灌頂などの伝統的宗教儀礼も一つの「身心変容技法」といえます。もちろん、瞑想やイニシエーション、武道や武術や体術などの修行、各種スポーツのトレーニング、歌・合唱・舞踊などの芸術や芸能、治療・セラピー・ケア、そしてもろもろの教育プログラムなど、「身心変容技法」という観点から見れば、じつにたくさんのことを人類は編み出し、活用し、伝承してきました。そして、それらの「身心変容技法」の多くは、師匠(指導者・先生)から弟子(後継者・生徒・学生)へと伝承され、追体験と吟味を重ね、実践と経験のふるいにかけられながら再編成・再構築されてきたのです。人類史は、そうした「身心変容技法の継承史」であり、イノベーションやリノベーションや上書きの積み重ねです。
身心哲学・身心機能論・身心変容技法
そうした「身心変容技法」の諸相を、身心変容技法会では、アカデミックな研究者や熟達した実践者50人ほどとともに探り、議論し、その探究の成果を『身心変容技法研究』(全8冊、京都大学こころの未来研究センター刊、上智大学グリーフケア研究所刊、2012年‐2019年)と題する研究年報や、『身心変容技法シリーズ第1巻 身心変容の科学~瞑想の科学(マインドフルネスの脳科学から、共鳴する身体知まで、瞑想を科学する試み)』(サンガ、2017年10月刊)、『「身心変容技法シリーズ第2巻 身心変容のワザ~技法と伝承(身心と心の状態を変容させる技法と伝承の諸相)」(サンガ、2018年2月刊)の2冊の研究書にまとめています。
特に第2巻の『身心変容のワザ』で取り上げた「身心変容技法」のいくつかは、今回のオンラインセミナーとも深く関係しています。たとえば、この本のなかでは、キリスト教神秘主義(鶴岡賀雄・東京大学教授)、太極拳などの中国武術(倉島哲・関西学院大学教授)、チベット密教(永沢哲・京都文教大学准教授:当時)、仏教(箕輪顕量・東京大学教授)、イスラーム神秘主義・スーフィズム(鎌田繁・東京大学教授)、荘子(中島隆博・東京大学教授)、湯浅泰雄(桑野萌・金沢星稜大学専任講師)などの「身心変容技法」の各論を取り上げました。また、世阿弥とスタニスラフスキーについて、レオニード・アニシモフ(ロシアの演出家)、セルゲイ・ヤーチン(ロシア・ウラジオストック極東国立技術大学文化人類学部部長)、松岡心平(東京大学教授)、内田樹(神戸女学院大学教授:当時)、松嶋健(広島大学准教授)、鎌田東二がディスカッションしていて、かならずやいろいろと参考になるところがあるとおもいます。
こうしたそれぞれの「身心変容技法」が成立してくるためには、そこに独自の身心哲学(身心観・身心存在論)と身心機能論(身心や霊性の存在やはたらきに対する考察、あるいは身心認識論)と具体的な身心変容技法(作法・修行法・ワザ)が必要です。それらを、たとえば、
①身心あるいは霊性はグラデーション(層位)を成しているという思想(一番シンプルなものは見えない身体性があるというアイデア)
②修行や体験によって、そうしたグラデーション(層位)を上昇し、浄化し、レベルアップしていくことができるという思想と実践段階の設定
③そうした深化・参入過程に、自力であれ、他力であれ、ある超越的な力がはたらいて、身心境位が飛躍的に向上するとする思想と、あらゆる超越的な力の介在を認めず、明確なプログラムに沿って漸次的・段階的に進展していくとする思想の二種
などとして、共通項を抽出し、位置づけてみることもできます。
「身心(霊性)」へのケア的向き合い方と死生観の錬成
今回の「身心変容技法オンラインセミナー」では、これまで10年近く探究してきた研究会の成果の一端を、この新型コロナウイルスのパンデミックの中で「3密」回避が求められている時代の「身心(霊性)」へのケア的向き合い方として、あるいは各自の死生観の練成への一助となるものとして、取り上げることができればとかんがえています。
それぞれの「身心変容技法」には、その基盤をなすそれぞれの哲学があり、視点があり、それに基づく技法があります。人類はさまざまな苦難に直面しながら、そのような多様なワザと哲学を開発してきました。それを今、このコロナ禍状況のなかで活かしていく道を探りたいとかんがえています。ご参加をこころよりお待ちしています。
2020年10月1日
身心変容技法会代表・鎌田東二(所属:上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授・同大学グリーフケア研究所所員、京都大学名誉教授)