サラナ サラナ

 

じんくみ 
オムライスへの道ーー私の病とマインドフルネスその6
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入院中のある週末

マインドフルネスの実践とは直接関わりがないかもしれないけれど、入院中に体験したエピソードで私がうれしかったことを一つ皆さんとシェアしたい。

 

ステロイド治療の1回目を終えた後、1回目の治療から2回目の治療まで3日を開けることになっていたので、特に予定がない週末をすごすことになっていた。

 

主治医の先生からは1回目のステロイド治療を終えた木曜日に「どうしても週末に帰りたかったら家に帰っても良いよ。あんまり人ごみに行かないようにしてもらえれば。」といわれる。

 

でも、その土曜日は100年に一度と言われるような大きな台風が来ることなっていたし、日曜日にはサンガの仲間もお見舞いに来てくれると言っていた。外に出歩るけるような状況でもないし、わざわざ家に帰るのも大変だから、まあ病院ないでいいかな、と思って「病院にいるので大丈夫です」という。

 

気になっていた病院にあるレストラン

そうか、でも外に出ても良いのか。この前、母と妹が行ったという一般病棟にある松本楼というレストランに私も行ってみたいな、と思い始める。

 

その日の自分の担当の看護師さんに「日曜のお昼に、松本楼に行くことってできますか?」と聞くと「食事制限って特にないんですよね?多分病院内だし大丈夫だと思うんですが、先生に聞いてみますね。」と言われる。

 

次の日の朝、主治医の先生が朝の検診に来てくれた時に「松本楼に行きたいんですって?良いですよ。大きい台風が土曜日に来るみたいだから、日曜日はやってると良いんですけどね。」と言う。

 

土曜日には大型の台風が来るけれど、夜には関東を抜ける予定だから大丈夫なはず。

 

金曜日に外来病棟5階にある眼科に検査に行った時に、検査が終わった後エレベーターで6階に上がって松本楼の前に行く。メニューと、ディスプレイを眺める。何が食べたいか考え始める。カレーかな…オムライスかな…ドリアかな…パスタかな…食べたいものが色々あって迷う。

 

病院食はまずいとは思わないのだけれど、洋食とかはほとんど出てこないし、割と薄めの味付けで、煮物とかはくたっとしている。いつも感謝しながら食べてます。でも、このレストランにあるようなものを食べたいと思ってたんだ。

 

病室に帰って、主治医の先生が夕方検診に来てくれた時に「何がおすすめですか?」と聞いたところ「やっぱりオムライスかな。オムライス超美味しいよ。」って言ってくれる。

 

やっぱりオムライスですか!よし、オムライスにしよう!と心に決めてオムライスを楽しみに残りの2日間を過ごすことにする。

 

土曜日は台風で家族も友人もお見舞いには来なかったので、病院の中をウロウロしていた。ローソンにいって、その「ついで」に松本楼にも行く。今日は台風だけど、明日は本当にやっているだろうか。きっとやっているはずだけど一応確認しよう。外来病棟の上に上がって松本楼の前に行ってみる。

 

レストラン「松本楼」に着くと

松本楼の前に看板が出ている。その看板をよく見てみる。今日は休業というお知らせだろうか。

 

「臨時休業のお知らせ 12日(土)13日(日)は台風のため臨時休業とさせていただきます」と書かれている。

 

なんと!!!12日(土)だけでなく13日(日)も休業なんですか!?もう、台風は通過しているはずなのに~!電車が止まってしまうかもしれないからなんでしょうか。ガーン!!

 

仕方がないから、明日(13日)ではなく明後日(14日)にさせてもらおう。14日も祝日でやることないから、大丈夫のはず。

 

看護師さんに「松本楼やってなかったんです。13日じゃなくて14日させてもらえませんか?」と言ったところ「大丈夫だと思うんで、先生に聞いてみます」とのこと。

 

主治医の先生が後で来て「大丈夫ですよ」と言ってくれる。そして「あそこのオムライスは2つ味があるんだよ」という話をしてくれる。私もすでにディスプレイで確認しましたよ、先生!「中華味とデミグラスソース味ですよね。先生のおすすめはどちらですか?」と聞いた。「中華味は甘酸っぱい感じなんだよね。俺のおすすめはデミグラスソースかな。」と言ってくれる。やっぱりデミグラスソースですか!「わかりました。あと1日オムライスのことを考えて過ごします。」と言う。心待ちにした時間がきっと料理をさらに美味しいもにしてくれるはず。オムライスのことを考えながら眠る。明日はオムライスの日だ!

 

今度こそ松本楼へ行けるのか

月曜日の朝、台風の爪痕のニュース(各地で川が溢れていた)を見ながら、秋名菊の絵をかきつつ共有スペースで時間を過ごしていたら。すると、その日の担当の看護師さんがやってきて、「今日、松本楼に行くっておっしゃってたという話なんですが、昨日の担当の看護師が分かっていなかったと思うんですけど、松本楼は外来がやっている時にしかやってないから、今日はお休みだと思うんですよ。」と言われる。

 

え!松本楼が休み…!!

 

しかも「明日からはステロイドの点滴を再開するんで、血糖値を測るので明日からは難しいと思います。」と言われる。そんな!!松本楼をここ数日心待ちにしていたのに!とショックを受ける。しかも、ステロイド中はいけないとなると、もうこの入院期間中には行けなさそう…悲しい…。

 

でももう、その日のお昼を病院食で食べる気にはならない。「この近くにどこか、ご飯食べられるようなところ、ありますか?」と聞くと「この近くにはあんまりなくて、ちょっとバスに乗ったところにガストとバーミアンならありますよ」と言われる。

 

ガストか…松本楼とはだいぶ違うな…しかも、あんまり近くないのか…。でも仕方がない。その日のお昼はどうしても何か洋食が食べたい気分だった。この際ガストで我慢しよう。

 

看護師さんに「すみません、お昼だけ外に食べに行けますか?」と尋ねたところ「先生に聞いてみますね」と言ってくれる。

 

しばらくすると主治医の先生がそこに来てくれる。おぉ。祝日なのに、しかも台風空けなのにお医者さんたちも病院来てるんですね。

 

「外出許可のこと、オッケーです。でも、僕はネットでこの病院の松本楼のこと調べたんだけど、休みの日もやってるはずだと思うんですよね。もしかしたら、台風の影響でやってないかもしれないんだけど。今、松本楼に電話をかけたんだけどつながらなくて、病院内の他の部局にも聞いてみたんだけど分かんないって言うんだよね。だから12時前に看護師さんにもう一度電話をかけて問い合わせてもらうから。それで、松本楼がやってなかったら、外に出てお昼を食べに行っていいですよ。マスクを着けて人ごみには行かないように気を付けてね。万一外に出られなかった時のために、病院食も一応止めないでおきましょう。でも、多分松本楼やってると思うんだよね。ナースステーションでもあんなに行きたがってるんだから何とかして松本楼に行かせてあげようってみんな一生懸命になってくれてて、松本楼のことであんなにみんなが一つになったことはかつてないぐらいだよ。」と言ってくれる。

 

なんと!!そんな風に先生や看護師さんたちがサポートしてくれていたなんて!!先生がわざわざ松本楼とそして他の部局にまで電話をかけてくれていたことに胸をうたれる。そんな風に自分のために動いてくれる人がいるってなんてありがたいんだろう、って思う。私は本当に恵まれているな、とその喜びを呼吸とともに味わう。素晴らしい主治医の先生に巡り合えて本当に幸せだな。

 

そして11時半ごろ担当の看護師さんが来てくれる。そして、「じんさん!松本楼は、やってましたよ!!」とお知らせしてくれる。

 

やったー!わーい!

 

本当に今度こそ松本楼へ

母が11時半ごろついて、家から着替えなどを届けてくれた。待ちきれずに、ちょっと早いけれど11時40分ごろに自分の病室を出て、松本楼へ向かう。お店の前で待っているのもいい。

 

結局11時50分に到着。12時開店の10分前。年配の店員さんが店を開けていた。「いらっしゃいませ」と言われて母が「まだ、早いですよね」と言うと「いいですよ」と言って中に入れてくれる。

 

(もちろん)1番乗り。景色のいい席に案内してくれる。松本楼がオープンしてくれていて、たどり着くことができた、という時点で相当うれしい。「うれしいー!」と母に喜びを伝える。

 

メニューを一通り見た後で、再検討した結果、やっぱりデミグラスソースのオムライスを頼むことにする。しばらくすると、オムライスが届く。半熟卵と、デミグラスソースがキラキラ輝いて見える。じっくり眺めて、匂いをかぐ。そしてゆっくりと一口を口に入れる。

 

デミグラスソースと卵とケチャップご飯の味が口の中に広がってとっても幸せ。美味しいー!うれしいー!しあわせー!「おいしーい!しあわせー!」って何度も言っていたら隣にいる母親が笑っていた。だって美味しくて幸せなんだもの。

 

人生で一番美味しいオムライス

今までの人生の中で食べたオムライスの中で、一番美味しかった。それは2週間の病院食の後で、病院食に飽きて洋食を恋しがっていたということもあるけれど、「松本楼にいけないかも!」となった後で、私がいけるように主治医の先生が尽力してくれて、問い合わせをしてくれて、何とか私を松本楼に行けるようにしてくれたこと、ナースのみなさんもサポートしてくれたこと、みなさんの温かさの中で出会えた一口だったからだと思う。満腹になってお腹も心も満たされた。

 

松本楼からの帰り道、母と分かれて自分の病室へと帰る帰り道の中で、一歩一歩を踏みしめながら、幸せを味わう。病院の廊下もなんだか前よりも温かくて優しい場所に見えた。世界が優しい場所に見える。頭の中にはユーミンの「やさしさに包まれたなら」が流れていた。この世界って良い場所だなと思った。

 

翌日主治医の先生に「昨日はありがとうございました。お医者さんにレストランにまで電話かけさせてしまってすみません。」と言ったところ、「いえいえ、良いんですよ。僕は何の根拠もないけれど『病は気から』って思ってるんで。松本楼のオムライスを食べれば、あなたは元気になるはずだと思っていた。だから、治療のためにも良いんですよ。」と言ってくれる。

 

その言葉にも胸を打たれる。単なる患者として症状の治療をしてもらっただけでなく、人間として大事にしてもらって、癒されたなぁと思う。とても素敵な先生に担当してもらえて本当に幸運だったな、と思うし「マインドフル」という言葉を使わなくったって、慈悲のプラクティスを実践している人たちがいる。身体だけでなく、気持ちを大事にしてもらって感謝という言葉では言い切れない、感謝の気持ちが湧いてきた。

 

たくさんの人に優しくされた。「人にやさしくされた分、人にやさしくできる人になれますように」と祈る。

 

私はあの時食べたオムライスの味を、一生忘れないと思う。

(じんくみさんの「私の病とマインドフルネス」入院編のお話は今回で終了ですが、連載は今後も続きます)

 

「私の病とマインドフルネスその1」は【コチラ】

「私の病とマインドフルネスその2」は【コチラ】

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「私の病とマインドフルネスその5」は【コチラ】

「私の病とマインドフルネス番外編」は【コチラ】

 

 

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