新進気鋭の仏教学者 川本佳苗こと、元・サヤレー・スナンダの「ぶぶ漬けどうどすか?」第7回
こんにちは! 法名スナンダこと川本佳苗です。わうわう、もう2020年になって2ヶ月経ってしまいましたね。遅筆な私をお許しください。毎月決まった日に定期連載したいと思っているんですけど……。申し訳ございません。
そんな私の近況ですが、2月9日に弾丸日帰りで東京の「シャン民族の日記念パーティ」に参加してまいりました。だってだって、私の大大大好きなミャンマー人歌手(厳密にはシャン民族)のハントゥンがライブしたからです!
ライヴ中のハントゥン。くぅーイケメン! カッコいい!
ハントゥンとツーショットが撮れたので、我が人生に悔いなしです。
私のハントゥン愛は、ミャンマー留学中の2010年にオーストラリア人比丘のカッピヤ(お付きの人)として同行したマンダレー旅行にさかのぼります。夜行バスの中で、一枚のミャンマーポップス(M-POP?)のコンピレーションDVDが延々と爆音でリピートされていたのですが(東南アジアは大体夜行バスでDVDが爆音再生されます。寝たければ耳栓必須です)、その中の一曲に不思議と心魅かれたのです。あ、この声ステキだなぁって。10曲以上の違う歌が再生され続けた一夜の中で、私はまたあの歌の順番が回ってこないかなと心待ちにしていたのでした。
それがハントゥンの
「思い煩う歌」(Yin Khone Bat Thoe Tan Chin)
だったのでした。
どうですか?甘くて柔らかくて透明な歌声でしょ?
「han tun- yin khone phat tho. tan chin」
このメロディのオリジナルはシカゴの「素直になれなくて」(Hard To Say I’m Sorry)です。ミャンマーポップスの大半が、海外の既存の楽曲にミャンマー語の歌詞を乗せていて、別にオリジナルの歌の翻訳ってわけでもなく、独自の内容を歌っています(笑)。
「Chicago – Hard To Say I’m Sorry/Get Away (Official Audio)」
私はミャンマーのスーパーマーケットなどのBGMでハントゥンの歌が流れていたら、それが知らない歌でもハントゥンだと聞き分けられます。それぐらい彼の声が好きなんですー!
はい、仏教と関係ない話で失礼しました。ところで、現在5名の方から質問をいただいています。皆さま、有難うございます!順々にお答えしますね。
今回は、仏教美術の研究者であるAさんからのお便りを紹介します。同じ女性で仏教研究者でいらっしゃるんですね。こんな私ですが仲良くしてやってください。ぜひ今後ともよろしくお願いいたします!
「WEBでの楽しい記事をありがとうございます。遇目して拝読にいたったのですが、誠実で優しいお人柄が伝わり、ほっこりさせていただきました。タイ・ミャンマーでは英語で瞑想ができるとのことで、非常に興味があります。大学院時代によく利用していたゲストハウスのオーナーが、ミャンマーで修業された方で以前から東南アジア仏教に興味を持っています。」
「誠実で優しい」…わーん嬉しいです。そして前回の瞑想センター特集の記事を気に入ってくださって有難うございます!質問は以下のお2ついただいています。
質問1:神道の信仰者でも現地での瞑想に参加できるものでしょうか?
まず、一つ目のご質問についてですが、もちろん仏教徒でない人でも、仏教瞑想センターは受け入れていることが多いと思います。ご安心なさってください。ただ、修行中は誰でも仏教の八戒または十戒を守る必要があります。大半の瞑想センターでは八戒ですが、パオ瞑想院では十戒を守ります。
タイでもミャンマーでも、欧米人修行者をたくさんお見かけしますが、彼らが必ずしも仏教徒に改宗なさっているわけでもないと思います。私が昨年行ったパオのピンウールイン僧院では、以前、シリア人のイスラム教徒の男性が修行なさっていたそうです。彼は瞑想を大変気に入ったのでまた戻ってくるかもしれないとお聞きしました。ただ、その人はスリランカでの修行を検討していらっしゃったけど、スリランカ内でのイスラム教徒との仏教徒との緊張状態を懸念して、最終的にミャンマーになさったそうです。
このように、仏教徒でない人の場合、修行者の側で受け入れてもらいやすそうなインターナショナルな雰囲気の瞑想センターを選ぶとよいかもしれません。
比丘として出家するなら律を受けるための得度式が必要ですけど、在家なら「仏教徒」になるために、洗礼のような特別な儀式というものは特にないんです。「今日から五戒を守ろう」と心に決めたその日から、あなたも仏教徒です。まぁ、この五戒を完璧に守るのがまた難しいんですけどね…。皆さん、嘘ついていませんか?不倫していませんか??
そして、Aさんの二つ目の質問です。
質問2:亡き父がタイ(?)で購入した仏像のペンダントを持っています。触地印仏陀でどこで制作されたのか知りたいと思っています。なにか手掛かりはありませんでしょうか。
お父様のお形見のペンダントなんですか。それはいつかタイに持っていってぜひ里帰りさしあげるとお父様もペンダントも喜ばれるでしょう。^^ 実物を見てみないと何とも言えないのですが、バンコクの王宮広場やエメラルド寺院の周りにはアンティークの仏像ペンダントを売るお店がたくさん並んでいます。そういうところで一度聞いてみられてはいかがでしょうか?意外に歴史的価値があるものかもしれませんね。
もしバンコクに行かれる機会がありましたら、サイアム・ソサエティという王室が支援している機関があるのですけど、素晴らしい図書室があるので、資料を調べてみられてもよいかもしれません。私はタイ留学中、会員だったのでこの図書室でよく自習していました。BTSのアソーク駅のそばにあるので便利です。
「The Siam Society」(http://www.siam-society.org/)
サイアム・ソサエティでは、タイの美術や音楽など、文化に関するレクチャーが定期的に開催されています。私もよく参加していました。
タイやミャンマーでは、えっそんな古いものがこんな道端で売られているの?!ってものもあります。現在は問題になっているのですが、寺院が、所蔵していた貝葉(ヤシの葉)写本の価値を知らずに手放してしまい、露店で売られていたり、海外に流出してしまったりしています。せっかくセットとして綴じられた写本であったものが一度バラバラになってしまうと、再編不可能になります。これらの写本は、東南アジアで独自に発展したジャータカ物語や仏教説話を描いた貴重な文献資料の場合もあるので、最近では保存への意識が高まっています。
オランダのライデン大学図書館で展示されていたシンハラ語の貝葉写本。ヤシの長い葉っぱに文字が刻まれています。
こちらもライデン大学図書館所蔵ですが、タイの紙写本で、貝葉写本よりは時代が新しくなります。
美しい挿絵は、美術工芸品としても研究価値のあるものです。
ではでは、今回はここまでで、また次回、残りのご質問もお答えしていきたいと思います。
他にも、これまでの連載についての質問や、私に質問したいこと、ミャンマー仏教で知りたいこと、連載で取り上げてほしいこと、感想などがございましたら、メールアドレス[info@samgha.co.jp]宛に件名「ぶぶ漬け」と書いて送ってくださいね!
慈悲をこめて、
スナンダこと川本佳苗
川本佳苗(かわもと・かなえ)
京都府出身。出家名スナンダ。京都大学東南アジア地域研究研究所研究員。専門は仏教倫理(自殺・自死)と東南アジアの瞑想実践・仏教文化。2008年よりミャンマーの国際テーラワーダ布教大学に留学し、パオ(パーアゥッ)瞑想院で尼僧として修行する。2014年にタイのマハーチュラーロンコーン大学で修士号を取得後、日本学術振興会特別研究員(DC)・ベルン大学宗教学研究所研究員を経て、2017年に龍谷大学大学院で博士号を取得。国内外で広く活動し、”Love Incessantly Flows: Mae Naak, a New Asian Opera Heroine Born outof a Thai Buddhist Narrative“(Contemporary Buddhism、2017)、「パーリ経典に描かれる比丘の自殺と対話の意義」(『別冊サンガジャパン④ 死と輪廻』、2018)など多数の論文を発表。『K.N.ジャヤティラカ博士論文集 第1巻』を翻訳。
Website: https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/organization/staff-2/kawamoto/
『サンガジャパンVol.34お金』(2019年12月末刊行)では、スナンダ節でサヤレー時代のお金にまつわる苦労話を書いています。