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2020.11.09

イベント紹介 編集部

虹の身体―チベット仏教の瞑想と身心変容技法―身心変容オンラインセミナー第3回と永沢哲さんのこと

マインドフルネスの脳科学の紹介者

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身心変容技法オンラインセミナーの第3回は永沢哲さんの登場です。永沢さんとは何冊かの本を作らせていただいていて、私自身とても信頼している執筆者、研究者のおひとりです。

永沢さんの肩書は「宗教学者」ですが、日本でいち早くマインドフルネスと脳科学の関係を紹介したのが永沢さんです。いまでは常識のように語られる瞑想における脳科学研究ですが、一般書としてその現状を知らせてくれたのは、『瞑想する脳科学』(講談社選書メチエ、2011)でした。

 

『瞑想する脳科学』永沢哲(講談社選書メチエ、2011)

 

 慈悲をめぐるデーヴィッドソンたちの研究は、瞑想が、脳の特定の神経回路を、それまで想像されたこともないような強度で、広範囲に活性化させること、その過程には、創発やトップダウン因果性の原理、そして神経可塑性が強くはたらいていること、瞑想によって、情動にかかわる脳が大きく変化する可能性を明らかにした。その翌年の二〇〇五年、サラ・ラザーは、ヴィパッサナ瞑想によって、脳の物理構造そのものが変化することをしめし、アメリカ社会に大きな衝撃をあたえた。

(『瞑想する脳科学』講談社選書メチエ、2011、p. 146)

 

 チベット仏教の研究者として知られ、『ゾクチェンの教え』や『虹と水晶』など、イタリアを拠点に活躍したチベットの高僧ナムカイ・ノルブ師の翻訳も多く手掛けている人なので、チベット仏教に偏っているかと思いきや、ヴィパッサナー瞑想と脳科学の研究への言及があり、またその解説も的を得たもので、とてもバランス感覚のある、冷静な立ち位置からの筆致で書かれています。

 その後、やにわにマインドフルネスが日本の中で脚光を浴びるようになっていきましたが、グナラタナ長老の『マインドフルネス』を翻訳出版して、マインドフルネス・ブームの火付け役の一端にもなっていたサンガですから、さらに追いかけていきたいと思い、香山リカさんと対談集『マインドフルネス最前線』(サンガ、2015)を企画し、その対談者のひとりに永沢哲さんにお願いしたのでした。

 

『マインドフルネス最前線』香山リカ(サンガ、2015)

 

チベット密教の修行者であり研究者

 では、そもそもなぜ永沢さんがチベット仏教の研究者になったかというエピソードが面白いのでご紹介します。

 東京大学の法学部の出身ですが、野口整体を探求して、その後チベット仏教の修行者、研究者となったそうです。藤田一照さんとの対談『禅・チベット・東洋医学』(サンガ、2017)で次のように語っておられます。

 

 僕は、大学を卒業してから、はじめはフランス哲学をやっていたんです。(中略)フランス哲学の中では、ドゥルーズとガタリによるラカンとかフロイトの批判に興味がありました。ところがあるとき「これは、いくらやっても、絶対的に最終的に幸せにならないようにできている」と思ったんです、その頃、すごく不幸で、「なんとかしたい」と思っていたので、「これはあかんな。ヨーロッパをやってもだめだ」と思い、アジアに切り替えようとしたんです。

(『禅・チベット・東洋医学』サンガ、2017、p. 150)

 

 そして友達にインドに行ったほうがいいよと勧められてインドに行くのですが、その機中で……

 

 でもその頃僕は、ヨーガとか瞑想にまったく興味がありませんでした。インドに行く飛行機の隣に坐った女の子が、「ヨーガのアシュラムに行きます」とか言うのを、「ばかじゃないか」と思って聞いていました(笑)。

(同、p. 151)

 

 けっこう、ひどい、、、。

 しかしインドで心境が変わり、帰国後にそれまで嫌いだったというユングの勉強を始め、勉強会で縁のできた野口整体に傾倒していきます。野口整体をやりこみ、のめりこんでいたというのですが……

 

 あるときから、どうも野口整体では、心についての理解が足りないと思い始めたんです。自分の体験していることをうまく説明できないと思うようになった。一通りいろいろ調べたのですが、一番ピンときたのが、チベット仏教に伝承されてきたゾクチェンの教えだったんです。

(同、p. 152)

 

 そんな永沢さんが、『身心変容技法シリーズ① 身心変容の科学~瞑想の科学』では科学的な研究の側面が、『身心変容技法シリーズ② 身心変容のワザ~技法と伝承』では密教修行の側面を伝えてくれています。

 

 

『禅・チベット・東洋医学』藤田一照、永沢哲(サンガ、2017)

 

 現在『サンガジャパン』で連載中の「光の哲学~虹の身体(からだ)」では修行の進んだ高僧が亡くなるときの様子を、具体的な事例をもとに執筆をいただいています。

 そして今回のオンラインセミナーのテーマが「虹の身体」です。チベット仏教の深奥を知る回になると思います。どうぞご期待ください。

(編集部・川島)

 

第3回 永沢哲先生

11月15日(日)10~12時

「虹の身体―チベット仏教の瞑想と身心変容技法―」

 

お申し込みは【コチラ】

 

 

第3回 永沢哲先生

11月15日(日)10~12時

「虹の身体―チベット仏教の瞑想と身心変容技法―」

チベットは、8世紀から13世紀にかけて、インドの仏教を丸ごと移植する壮大な試みを行いました。特に重要なのは、最も後期に発達した密教を移植したことです。その伝統は、現代にいたるまで、生き生きと保たれています。今回のセミナ―では、チベット密教について概観したうえで、特にマハーサンディに焦点を当てます。

マハーサンディーチベット語で「ゾクチェン」―は、「大いなる完成」を意味します。その修行を完成した修行者は、死の時一週間ほど、「トゥクタム」(「聖なる心」)と呼ばれる状態に入り、その間、肉体は純粋な光に融け入って、消えてしまいます。この「虹の身体」の近年の実例について、画像を見ながら考えます。『チベットの死者の書』は、この伝統に属しており、欧米のホスピスや、ターミナルケア従事者のトレーニングにおいて用いられています。その現代的意義についても、ご一緒に考えたいと思います。

(永沢哲)

 

1957年、鹿児島生まれ。東京大学法学部卒業。宗教人類学(チベット仏教)、身体論。京都文教大学准教授を経て、アティ=ゾクチェン研究所所長、上智大学グリーフケア研究所客員准教授。現在の主な研究テーマは、チベットに伝承されるゾクチェン密教、ロンチェンパの哲学、人類の思考における「微細な身体」の観念の発生と展開、仏教哲学と科学のインターフェース。文献研究、フィールドワーク、科学をつなぐ作業を行っている。著書に『野生のブッダ』(法蔵館)、『野生の哲学―野口晴哉の生命宇宙―』(筑摩文庫、湯浅康雄賞)、『瞑想する脳科学』(講談社)、訳書に『虹と水晶』、『夢の修行』、『チベット密教の瞑想法』(法蔵館)、『癒しのダンス』(講談社)、論文にThe Rainbow Body (in J. Oliphant & D.Rossi(eds.),  Shar ro:Festschrift in Honor of Chogyal Namkhai Norbu)などがある。

 

「サンガジャパンオンライン」にて、永沢哲先生のコラムを掲載しています。

長寿の修行 チベット医学にもとづく瞑想・健康・長寿(永沢哲)